ナーラーヤナとは
ナーラーヤナ(ナーラーヤナアストラ)は、古代インドの叙事詩マハーバーラタに登場する神の武器です。ナーラーヤナは、ヒンドゥー教の最高神の一柱ヴィシュヌの別名で、この武器にはヴィシュヌの力が宿っているとされました。「ナラヤナ」と表記されることもあります。
ナーラーヤナは、空から無数の武器を降らせる恐るべき力を持つ武器として描かれ、その壮大な描写から、古代に核兵器があったのではないかという「古代核戦争説」の根拠として、たびたび取り上げられてきました。
ヴィシュヌ神の名前「ナーラーヤナ」
「ナーラーヤナ」は、ヒンドゥー教でヴィシュヌ神を呼ぶ名前の一つです。その意味については、「水を住まいとする者」「人々の拠りどころ」などの説があります。ヒンドゥー教の神話では、ヴィシュヌは原初の海に浮かぶ蛇の王アナンタの上で眠っており、この姿のヴィシュヌはナーラーヤナと呼ばれます。
神の武器「アストラ」
マハーバーラタやラーマーヤナには、「アストラ」と呼ばれる神々の武器が数多く登場します。アストラは、特別な呪文を唱えることで神の力を呼び出して放つ武器で、それぞれの神の名前がつけられています。創造神ブラフマーの力を宿した「ブラフマーストラ」や、ヴィシュヌの力を宿した「ナーラーヤナアストラ」などが有名です。
マハーバーラタのナーラーヤナ
マハーバーラタの大戦争の中で、カウラヴァ軍の武術の師ドローナが討たれると、その息子アシュヴァッターマンは怒りに燃え、父の敵を討つためにナーラーヤナを放ちました。すると天に無数の火の矢や円盤、武器が現れて降り注ぎ、激しい風が吹き荒れ、雷鳴がとどろき、大地が揺れたといいます。
この武器は、立ち向かえば立ち向かうほど力を増し、武器を手に戦う者を焼き尽くしていきました。パーンダヴァ軍の兵士たちは、なすすべもなく倒れていきます。
武器を捨てて頭を垂れる
このとき、パーンダヴァ軍の味方をしていた神クリシュナは、ナーラーヤナの秘密を兵士たちに教えました。この武器は、武器を持って戦う者だけを攻撃し、武器を捨てて頭を垂れる者には害を与えないというのです。
クリシュナの助言に従って、兵士たちが全員武器を捨て、戦車から降りて頭を垂れると、ナーラーヤナの力は静まり、やがて消えていきました。ただ一人、勇敢な王子ビーマだけは武器を捨てようとせず、ナーラーヤナの火に包まれてしまいますが、クリシュナたちに引きずり下ろされて救われたと語られています。
古代核戦争説との関係
ナーラーヤナの描写は、同じくマハーバーラタに登場する「ブラフマーストラ」などとともに、古代核戦争説の根拠としてたびたび取り上げられてきました。空が燃え、大地が揺れ、多くの人々が一瞬で倒れていくような描写が、核兵器の爆発を思わせるというのです。
しかし、これらは神話の武器の圧倒的な力を、壮大な言葉で表現したものと考えられています。古代に核兵器が使われたことを示す考古学的な証拠は見つかっていません。空飛ぶ乗り物ヴィマナとともに、古代インドの超兵器伝説として知られています。
日本の仏教とナーラーヤナ
ナーラーヤナの名前は、仏教とともに日本にも伝わっています。仏教では、ナーラーヤナは「那羅延天(ならえんてん)」と呼ばれ、強い力を持つ守護神とされました。寺の門の左右に立つ金剛力士像(仁王像)のうち、口を閉じた像は「那羅延金剛」と呼ばれることがあり、インドの神の名前が、身近な仁王様の名前として残っているのです。





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