デュラハンとは
デュラハンは、アイルランドに伝わる、首のない騎士の姿をした妖精です。自分の首を小脇に抱え、黒い馬にまたがって夜道を駆けるといわれています。首のない馬が引く黒い馬車に乗って現れる、という話もあります。デュラハンが止まった家では近いうちに死者が出るとされ、死の予兆として恐れられてきました。
現代のゲームやアニメでは、鎧をまとった首なし騎士のモンスターとしておなじみですが、もともとはアイルランドの田舎で語り継がれてきた、死を告げる妖精でした。名前はアイルランド語(ゲール語)で「暗い人」あるいは「首のない者」といった意味だとされます。
デュラハンの姿と特徴
デュラハンが抱えている首は、腐りかけたチーズのような色をしており、口元には不気味な笑みを浮かべているといわれます。首の目は暗闇でも遠くまで見通すことができ、デュラハンは首を高く掲げて、死ぬ運命にある人を探すのだと語られます。
デュラハンは、人間の背骨で作った鞭を持っているといわれます。また、デュラハンが通りかかったときに窓や扉を開けてのぞいた人は、たらいいっぱいの血を顔に浴びせられたり、目をつぶされたりすると伝えられました。そのため、夜に外から馬の足音が聞こえても、決してのぞいてはいけないとされていたのです。
死を告げる黒い馬車
デュラハンは、首のない馬が引く黒い馬車に乗って現れることもあります。この馬車は「コシュタ・バワー(音のない馬車)」などと呼ばれ、ものすごい速さで走るため、通り道の草が焼け焦げてしまうほどだといわれます。馬車の車輪の軸には人間の大腿骨が使われ、車輪の飾りには頭蓋骨がついているとも語られました。
デュラハンが馬や馬車を止めた家では、まもなく誰かが亡くなるといわれます。また、デュラハンが人の名前を呼ぶと、その人はすぐに死んでしまうとも伝えられました。デュラハンは死を運んでくる存在というより、死者を迎えに来る存在として恐れられていたのです。
デュラハンから身を守る方法
そんな恐ろしいデュラハンにも、苦手なものがあります。それは黄金です。金のピンや金貨など、ほんの小さな金の品でも、デュラハンに投げつけたり身につけたりしていれば、デュラハンを追い払うことができるといわれています。
伝承を記録した人々
デュラハンの話は、19世紀前半にアイルランドの民話を集めたトマス・クロフトン・クローカーの民話集などによって記録され、広く知られるようになりました。クローカーは、アイルランド南部の村々に伝わる妖精の話を数多く書き留めており、首なしの騎手や首のない馬が引く馬車の話も収められています。同じアイルランドの死の予兆の妖精としては、泣き叫んで死を知らせるバンシーが有名です。
ヨーロッパの首なし騎士の物語
首のない騎士の話は、アイルランドだけでなくヨーロッパ各地にあります。14世紀のイギリスの物語『ガウェイン卿と緑の騎士』では、首を切り落とされた緑の騎士が、自分の首を拾い上げて小脇に抱え、平然と馬に乗って去っていく場面が描かれています。
アメリカの作家ワシントン・アーヴィングが1820年に発表した短編『スリーピー・ホロウの伝説』に登場する首なし騎士も、よく知られた存在です。この物語は何度も映画化され、首なし騎士のイメージを世界中に広めました。
現代のデュラハン
現在、デュラハンはゲームやアニメ、ライトノベルなどで、鎧をまとった首なしの騎士や、首を抱えた女性のキャラクターとして描かれることが多くなりました。もとの伝承とは姿が違うこともありますが、「首がない」「死を告げる」という特徴は今も受け継がれています。首なしの怪異は日本にもあり、首だけが飛び回るろくろ首の「抜け首」の話とは、ちょうど反対の姿といえるかもしれません。







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