シミュレーション仮説とは
シミュレーション仮説とは、私たちが暮らしているこの世界そのものが、はるかに進んだ文明のコンピューターの中で動いている「シミュレーション(仮想現実)」なのではないか、という考え方です。私たち自身も、そのプログラムの中の存在だというのです。
ボストロムの論文
2003年、イギリスのオックスフォード大学の哲学者ニック・ボストロムは、「あなたはコンピューター・シミュレーションの中に生きているか?」という論文を発表しました。ボストロムは、もし文明が十分に発達して、祖先の世界を丸ごと再現するシミュレーションを大量に作れるようになるなら、本物の世界の住人よりもシミュレーションの中の住人のほうがはるかに多くなる。だとすれば、私たちがシミュレーションの中にいる可能性は高い――という議論を示しました。
ただし論文では、「文明はそこまで発達する前に滅びる」「発達してもそうしたシミュレーションを作らない」という可能性も同時に挙げられており、必ずシミュレーションの中にいると主張したわけではありません。
昔からある「この世界は夢かもしれない」
「この世界は本物なのか」という問いは昔からあります。古代中国の思想家・荘子は、蝶になった夢から覚めて、自分が蝶の夢を見たのか、蝶が自分の夢を見ているのかわからないと語りました(胡蝶の夢)。17世紀の哲学者デカルトも、悪い霊にだまされて偽りの世界を見せられている可能性を考えました。1999年の映画『マトリックス』は、この考えを世界中に広めました。
なぜ今注目されるのか
2016年、実業家イーロン・マスクが「私たちが現実の世界にいる確率は数十億分の1だ」と発言して話題になりました。ゲームやVR、AIの急速な進歩によって、仮想の世界を作ることが身近になったことも、この仮説への関心を高めています。一方で、シミュレーションの中にいるかどうかを確かめる方法はなく、科学的な理論というより、哲学的な思考実験だと考える研究者も多くいます。マンデラ効果などを「シミュレーションのバグ」と考える人もいます。





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