死者の書とは
死者の書は、古代エジプトで死者とともに墓に納められた、冥界を旅するための呪文や祈りを集めた書物です。新王国時代のはじめ(紀元前16世紀ごろ)から広く使われるようになり、プトレマイオス朝の時代まで、約1500年にわたって作られ続けました。呪文の数は約200にのぼり、死者ごとに選ばれた呪文が、美しい挿絵とともにパピルスの巻物に書かれました。
古代エジプトでの本来の題名は「日のもとに出現するための書」です。「死者の書」という呼び名は、19世紀にドイツのエジプト学者レプシウスが名付けたことから広まりました。大英博物館の「アニのパピルス」は、特に有名な死者の書の一つです。
心臓の計量とオシリスの審判
死者の書の中で最もよく知られているのが、第125章に描かれる「心臓の計量」の場面です。死者は冥界の王オシリスの前に連れて行かれ、生前に悪いことをしなかったことを神々の前で誓います。そして、ジャッカルの頭をもつ神アヌビスが、天秤の片方に死者の心臓を、もう片方に真理の女神マアトの羽根をのせて量り、トキの頭をもつ知恵の神トトがその結果を記録します。
心臓が羽根と釣り合えば、死者は楽園「イアルの野」に迎え入れられます。しかし罪で心臓が重くなっていれば、ワニの頭とライオンの体、カバの後ろ足をもつ怪物アメミトに心臓を食べられ、二度目の死を迎えるとされました。
死者の書に込められた願い
死者の書には、冥界の門番に名前を問われたときの答え方や、蛇や怪物を追い払う呪文、来世で畑仕事をしなくてすむように身代わりの人形(シャブティ)を働かせる呪文など、死後の世界を無事に生き抜くための知恵が書かれています。古代エジプトの人々がミイラ作りに力を注いだのと同じく、死者の書も永遠の命への強い願いから生まれました。
なお、チベット仏教にも『チベットの死者の書(バルド・トドゥル)』と呼ばれる経典があり、日本では折口信夫の小説『死者の書』もありますが、いずれもエジプトの死者の書とは別のものです。古代エジプトの象徴としては、自分の尾をくわえる蛇ウロボロスもよく知られています。





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