ラジエルの書とは
ラジエルの書(ヘブライ語でセフェル・ラジエル・ハ・マルアフ=「天使ラジエルの書」)は、天使ラジエルが人類の最初の人間アダムに授けたと伝えられる、伝説の書物です。そこには、天と地の成り立ち、星の動き、天使たちの名前、そして未来の出来事まで、宇宙のあらゆる秘密が書かれていたといわれます。「ラジエル」という名前は、ヘブライ語で「神の秘密」を意味するとされます。
アダムからソロモン王へ――伝説の書の旅
ユダヤ教の伝承によると、エデンの園を追われて悲しむアダムに、神の秘密を知る天使ラジエルがこの書を与えました。ところが、人間が神の秘密を知ることをねたんだ天使たちが、書を奪って海に投げ捨ててしまいます。神は海の天使に命じて書を拾い上げさせ、アダムのもとに戻したといいます。
書はその後、アダムの子孫に代々受け継がれました。天に上げられた賢者エノクがこれを学び、大洪水の前には、ノアがこの書の知識をもとに方舟を作ったと語られます。のちには、知恵で名高いソロモン王の手に渡り、王はこの書から魔術の力を得たとも伝えられています。
実在する「ラジエルの書」
伝説の書とは別に、「ラジエルの書」という名前の本は実際に存在します。これは、中世のユダヤ教の神秘思想(カバラなど)の文書をいくつも集めてまとめたもので、天地創造の秘密、天使の名前と役割、星占い、文字や数の神秘的な意味、お守りの作り方などが書かれています。13世紀には、スペインのカスティーリャ王アルフォンソ10世の宮廷で、ラテン語に訳された写本も作られました。
この本は1701年にオランダのアムステルダムで初めて印刷され、広く読まれるようになりました。
家を守るお守りの書
印刷された「ラジエルの書」は、読む本としてだけでなく、お守りとしても大切にされました。この本を家に置いておくと、火事や災いから家を守り、特にお産をする母親と生まれたばかりの赤ちゃんを悪い霊から守ってくれると信じられたのです。本の中には、母子を守るための護符の図や文字も載せられていました。
天使ラジエルとは
ラジエルは、ユダヤ教の伝承に登場する天使で、神の玉座のすぐそばに仕え、天で語られる神の秘密や決定をすべて聞いているとされました。そのため「秘密の天使」「神秘の天使」とも呼ばれます。神の秘密を人間に伝えるという役目から、知恵や啓示をもたらす天使と考えられてきました。現代では、ゲーム『ソウル・リーヴァー』の主人公の名前に使われるなど、ファンタジー作品の中で神秘的な天使や堕天使の名として登場することもあります。
伝説と歴史を分けて考える
アダムが天使から授かったという話は信仰の中の伝説で、実際の「ラジエルの書」は中世以降にまとめられた書物です。それでも、天使や神の秘密に触れようとした人々の思いを伝える貴重な資料として、宗教や魔術の歴史の研究で取り上げられています。中世ヨーロッパの魔術書についてはグリモワールや、ソロモン王の名を冠したレメゲトン(ソロモンの小さな鍵)の項目も参考にしてください。



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