ケルピーとは
ケルピーは、スコットランドの川や湖にすむとされる、馬の姿をした水の精霊(ウォーターホース)です。水辺に美しい馬の姿で現れ、つい背中に乗ってしまった人を、そのまま水の中へ引きずり込んで溺れさせてしまうと恐れられてきました。
ケルピーは、スコットランドで最もよく知られた水の精霊の一つです。その伝説は、深く冷たいスコットランドの川や湖の危険を、人々に伝える役割を果たしてきました。
美しい馬の罠
ケルピーは、灰色や黒色の、とても美しく立派な馬の姿で水辺に現れるといわれます。疲れた旅人や、遊んでいる子どもたちの前に現れ、背中に乗るように誘うのです。人が背中に乗ると、ケルピーの皮膚は不思議な力でくっついて、もう降りることができなくなります。そしてケルピーは、乗った人ごと川や湖の深みへ飛び込んでしまうのです。
スコットランドには、ケルピーの背中に9人の子どもたちが次々と乗ってしまい、ケルピーの背中がどんどん長く伸びていった、という話も伝わっています。10人目の子どもは、ケルピーの首にさわった指がくっついてしまいましたが、自分の指を切り落として逃げ、ただ一人助かったといいます。
ケルピーの見分け方
ケルピーには、見分けるための手がかりがあるといわれていました。たてがみに水草がからまっていたり、体がいつも濡れていて冷たかったりするのです。また、ひづめが後ろ向きについているという話もあります。水辺で見知らぬ美しい馬を見かけたら、決して近づいてはいけない――それがケルピーの伝説の教えでした。
人に化けるケルピー
ケルピーは、馬の姿だけでなく、美しい若者の姿に化けて、人に近づくこともあるといわれます。しかし、人の姿になっても、髪に水草や砂がからまっていることで、正体がわかるとされました。
ケルピーの馬勒
一方で、ケルピーの馬勒(ばろく、馬の頭につける道具)を手に入れれば、ケルピーを思いのままに操ることができるという話も伝わっています。ケルピーを捕まえて馬勒をつけ、重い石を運ばせて家を建てさせた、という話もあります。また、ケルピーの馬勒が、代々家宝として伝わっていると語る家もありました。
詩人バーンズとケルピー
スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズは、1786年に発表した詩の中で、夜の浅瀬にひそみ、旅人を惑わすケルピーのことを詠んでいます。ケルピーは、スコットランドの人々にとって、とても身近な伝説だったのです。
巨大な像「ザ・ケルピーズ」
スコットランドのフォルカークには、2013年に、高さ約30mの巨大な2頭の馬の頭の像「ザ・ケルピーズ」が完成しました。鋼鉄で作られたこの像は、ケルピーの伝説と、かつてこの地域の運河で船を引いていた馬たちを記念して作られたもので、新たな名所として多くの人が訪れています。
スコットランドの水の精霊
スコットランドには、ケルピーのほかにも、さまざまな水の精霊の伝承があります。海や深い湖にすむ、ケルピーよりもさらに危険な水馬アハ・イシュケや、アザラシの皮を脱いで人間の姿になるセルキーなどです。日本の河童も、水辺に近づく人をおびやかし、子どもたちに水の危険を教える存在として、ケルピーとよく比べられます。







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