コボルトとは
コボルトは、ドイツの民間伝承に登場する精霊です。家に住みつくコボルトと、鉱山に住むコボルトの2つのタイプが知られています。小さな人間のような姿で語られることが多く、とんがり帽子をかぶった小人や、子どものような姿で描かれますが、人の前にはめったに姿を見せないといわれます。
現代のゲームでは、犬やトカゲのような姿の小さな魔物として登場することが多いコボルトですが、もともとのドイツの伝承では、人間の暮らしのすぐそばにいる、身近な精霊でした。
家のコボルト
家に住むコボルトは、台所や納屋、馬小屋などにすみつき、夜のうちに皿を洗ったり、床を掃いたり、家畜の世話をしたりと、家の仕事を手伝ってくれる働き者だといわれます。コボルトが住む家は栄えるとされ、人々はお礼として、ミルクやおかゆなどの食べ物を置いておきました。
ところが、お礼の食べ物を忘れたり、コボルトをからかったり、姿を見ようとしたりすると、コボルトは怒って、物を隠したり、皿を割ったり、夜中に大きな物音を立てたりするいたずらを始めるといいます。仲良くすれば頼もしい味方、怒らせると厄介な存在――それが家のコボルトでした。
ヒンツェルマンの話
家のコボルトの有名な例が、16世紀の終わりごろ、北ドイツのフーデミューレン城に現れたという「ヒンツェルマン」の話です。ヒンツェルマンは姿を見せずに声だけで人々と話し、台所の仕事を手伝ったり、ときにはいたずらをしたりしながら、数年間城に住みついたと伝えられています。この話は、のちに本にまとめられ、家の精霊の代表的な記録として知られています。
鉱山のコボルト
一方、鉱山に住むコボルトは、鉱夫たちにとって厄介な存在でした。暗い坑道の奥で物音を立てたり、鉱夫を迷わせたり、ときには落盤を起こしたりすると恐れられていたのです。鉱山の中で聞こえる不思議な音は、コボルトがつるはしで岩を叩いている音だとも考えられていました。
元素「コバルト」の語源
中世ドイツの鉱夫たちは、銀の鉱石のように見えるのに、精錬しても銀が取れず、熱すると有毒な煙を出す鉱石を「コボルトのしわざ」と考え、その鉱石を「コボルト」と呼びました。コボルトが銀を盗み、代わりに役に立たない鉱石を置いていったというのです。
1735年ごろ、スウェーデンの化学者ゲオルク・ブラントが、この鉱石から新しい金属元素を取り出し、「コバルト」と名付けました。鉱石から出ていた有毒な煙は、鉱石に含まれていたヒ素によるものでした。コバルトは、焼き物やガラスを鮮やかな青色に染める「コバルトブルー」の顔料としても知られています。
ニッケルと「悪魔の銅」
同じように、精霊や悪魔の名前が元素名になった例に「ニッケル」があります。銅の鉱石のように見えるのに銅が取れない鉱石を、ドイツの鉱夫たちは「クップファーニッケル(悪魔ニックの銅)」と呼びました。1751年、スウェーデンの化学者がこの鉱石から新しい元素を取り出し、ニッケルと名付けています。鉱夫たちが恐れた見えない存在の名前が、今も元素の名前として残っているのです。
船のコボルトとほかの精霊
ドイツの船乗りたちの間には、船に住みつくコボルト「クラバウターマン」の伝承もあります。クラバウターマンは船の修理を手伝い、船が沈む危険があるときには乗組員に知らせてくれるといわれました。家事を手伝う小さな精霊としては、イギリスのピクシーやブラウニーとも似ており、鉱山の精霊としては、地中にすむノームとも重なります。ゲームではゴブリンと並べて語られることも多い存在です。





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