イッカクとは
イッカクは、北極の海にすむクジラの仲間です。オスの頭からは、ねじれた長い牙がまっすぐ前に伸びており、その長さは2〜3mにもなります。この牙は、実は角ではなく、上あごの歯が伸びたものです。漢字では「一角」と書き、英語では「ナーワル」と呼ばれます。
イッカクの牙は、中世のヨーロッパで、伝説の生き物ユニコーン(一角獣)の角として、とても高い値段で取引されていました。イッカクは、ユニコーン伝説の「角」の正体だったのです。
「ユニコーンの角」の取引
中世のヨーロッパでは、額に一本の角を持つユニコーンの角には、毒を消したり、病気を治したりする力があると信じられていました。王や貴族は、毒殺を恐れて、ユニコーンの角で作った杯を使ったり、角の粉を薬として飲んだりしました。
そのため、「ユニコーンの角」として売られた長くねじれた白い角は、宮廷や富豪の間で、同じ重さの金よりも高い値段で取引されたといいます。しかし、その正体は、北の海でとれたイッカクの牙でした。
隠されていた正体
北欧のヴァイキングや、グリーンランドのイヌイットの人々は、昔からイッカクを知っていました。しかし、イッカクの牙は、産地を隠したまま商人の手でヨーロッパの各地に運ばれたため、長い間、本物のユニコーンの角だと思われていました。正体を明かしてしまえば、その価値が下がってしまうからです。
17世紀になると、デンマークの博物学者オーレ・ヴォルムが、「ユニコーンの角」とされるものがイッカクの牙であることを示し、ユニコーンの角の謎は解かれていきました。それでも、ユニコーンの角への信仰は、その後もしばらく続きました。
イッカクの牙の王座
デンマークのコペンハーゲンにあるローゼンボー城には、17世紀に作られた、イッカクの牙で飾られた王座が残されています。この王座は、デンマーク王の戴冠式に使われたもので、ユニコーンの角の持つ神秘的な力が、王の権威を高めると考えられていました。
牙の不思議な役割
イッカクの長い牙は、主にオスの上あごの左側の歯が伸びたもので、まれに2本の牙を持つものや、牙を持つメスもいます。牙はらせん状にねじれながら伸びていき、その表面には多くの小さな穴があいています。
牙の役割については、まだはっきりとはわかっていません。牙の中には多くの神経が通っていて、海水の温度や塩分の変化を感じ取る感覚器官ではないかという説があります。また、オスどうしが牙を見せ合って強さを競うためのものという説もあります。2010年代には、イッカクが牙で魚を軽くたたいて動きを止め、食べる様子が、ドローンによって撮影されています。
北極の海で暮らすイッカク
イッカクは、カナダやグリーンランド、ロシアなどの北極の海で、群れを作って暮らしています。冬は厚い氷に覆われた海で過ごし、氷の割れ目から顔を出して呼吸します。深くもぐるのが得意で、1000m以上の深さまでもぐって、魚やイカを食べることがわかっています。
近年は、地球温暖化によって北極の海の氷が減っていることが、イッカクの暮らしに影響を与えるのではないかと心配されています。北極の先住民の人々にとって、イッカクは昔から大切な食料であり、文化の一部でもありました。
伝説の正体だった生き物
イッカクは、伝説の生き物の「正体」となった実在の動物の代表的な例です。ナゾマップでは、かつて伝説や噂とされた生き物が実在を確かめられた例として、オカピやジャイアントパンダなどとともに紹介しています。





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