UAPとは
UAPは「Unidentified Anomalous Phenomena(未確認異常現象)」の略で、以前は「Unidentified Aerial Phenomena(未確認空中現象)」の略とされていました。正体のわからない空中の物体や現象を指す言葉で、アメリカ政府や軍が、近年正式に使うようになった用語です。
これまで使われてきた「UFO(未確認飛行物体)」という言葉には、「宇宙人の乗り物」というイメージが強くついてしまっていました。そこで、正体のわからない現象を、先入観なしに中立的に扱うために、UAPという言葉が使われるようになったのです。
UFOとUAPの違い
UFOも、もともとは「正体が確認されていない飛行物体」という意味で、宇宙人の乗り物だけを指す言葉ではありませんでした。しかし、1950年代以降のUFOブームの中で、UFOといえば宇宙人の空飛ぶ円盤、というイメージが広まりました。
UAPという言葉では、「飛行物体」ではなく「現象」という言葉が使われています。これは、正体が物体なのか、光や気象の現象なのか、あるいは観測機器の誤作動なのかもわからない段階で、何かを決めつけずに調べようという考え方を表しています。現在では、空だけでなく、海の中や宇宙空間で観測された正体不明の現象も含める意味で「異常現象」という言葉が使われています。
海軍の映像の公開
UAPが世界的に注目されるきっかけになったのは、2017年にアメリカの新聞が、国防総省がひそかに未確認の飛行物体の調査を行っていたことを報じたことでした。報道とともに、アメリカ海軍の戦闘機のパイロットが撮影した、正体不明の飛行物体の映像が公開されました。
2020年、国防総省は、これらの映像3本が本物であることを正式に認めて公開しました。映像には、高速で移動したり、急に向きを変えたりするように見える物体が写っており、大きな話題になりました。
国家情報長官室の報告書
2021年には、アメリカの国家情報長官室が、UAPに関する報告書を公表しました。報告書では、2004年以降に軍などから寄せられた144件の報告のうち、正体が特定できたのは1件だけで、残りのほとんどは説明できていないとしました。また、一部の事例では、物体が通常では考えられない動きをしているように見えたとも報告されています。
ただし、報告書は、宇宙人の乗り物であることを示す証拠があるとは述べておらず、データが不足しているために判断できない、という立場をとっています。
AAROの設置と調査
2022年には、UAPを専門に調査する部署「全領域異常解決局(AARO)」が国防総省に設置されました。AAROは、軍から寄せられる報告を集めて分析し、その結果を公表しています。2023年には、アメリカ航空宇宙局(NASA)も、外部の専門家による研究チームの報告書を公表し、UAPを科学的に調べるためには、より質の高いデータが必要だと提言しました。
2024年にAAROが公表した、過去の政府の調査を振り返った報告書では、アメリカ政府が宇宙人の技術を手に入れていたり、隠していたりする証拠は見つからなかったと結論づけています。一方で、議会の公聴会で元情報将校が政府の隠蔽を訴える証言をするなど、議論は今も続いています。
UAPの正体は?
AAROなどの調査では、多くの事例が、気球、ドローン、鳥、人工衛星、空中を漂うごみ、レーダーやカメラなどのセンサーの誤作動などで説明できるとされています。例えば、遠くを飛ぶ物体がカメラの視点の動きによって、実際よりも速く動いているように見えることがあります。
一方で、情報が不足しているために正体を特定できない事例も残っています。正体不明の物体が軍の訓練空域を飛んでいれば、航空機の安全や国の安全保障にかかわる問題になるため、調査が続けられているのです。
UFOの歴史とUAP
UAPへの関心の高まりは、「UFO=宇宙人」というイメージから一歩離れて、空の謎を冷静に調べようとする動きともいえます。「空飛ぶ円盤」という言葉を生んだ1947年のケネス・アーノルド事件や、同じ年のロズウェル事件から続く、空の謎をめぐる長い歴史の最新の章といえるでしょう。





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