フェイとは
フェイは、ヨーロッパの伝承に登場する妖精を指す古い言葉です。英語の「フェアリー(fairy)」の語源となった言葉で、人間とは別の世界に住み、不思議な力を持つ存在を広く意味します。英語では「fay」のほか、「fae」とつづられることもあり、現代のファンタジー作品では「フェイ」「フェイ族」として、妖精の一族を指す言葉としても使われています。
現代の私たちが思い浮かべる「小さくて羽の生えた妖精」は、実はかなり新しいイメージです。もともとのフェイは、人間と同じくらいの大きさで、強い魔力を持つ、美しく恐ろしい存在として語られていました。
「運命」から生まれた言葉
フェイは、ラテン語で「運命」や「運命の女神たち」を意味する「ファタ」という言葉がもとになり、古いフランス語で「妖精」を指す「フェ」という言葉になったとされます。生まれた子どもの運命を告げたり、贈り物を授けたりする女性の霊的な存在のイメージが、妖精の始まりにあったのです。
古いフランス語では、妖精の住む国や、妖精の魔法そのものを「フェリ」と呼びました。これが英語に入って「フェアリー」となり、のちに妖精そのものを指す言葉として使われるようになりました。
『眠れる森の美女』の妖精たち
運命を授ける妖精のイメージは、童話にも受け継がれています。1697年にフランスのシャルル・ペローが発表した童話『眠れる森の美女』では、王女の誕生を祝う宴に招かれた妖精たちが、美しさや優しさなどの贈り物を次々と授けます。ところが、招かれなかった年老いた妖精が「王女は糸車の針で指を刺して死ぬ」という呪いをかけてしまいます。妖精が子どもの運命を決めるというこの物語には、「運命」から生まれたフェイという言葉の意味がよく表れています。
アーサー王伝説のモルガン・ル・フェイ
アーサー王伝説に登場する魔女「モルガン・ル・フェイ(妖精モルガン)」は、名前のとおり妖精の力を持つ女性として描かれています。物語によって、アーサー王の異父姉として王を苦しめる悪い魔女として描かれることもあれば、傷ついた王を伝説の島アヴァロンへ運んで癒やす、優しい存在として描かれることもあります。
イタリアのメッシーナ海峡などで見られる蜃気楼は、「ファタ・モルガーナ」と呼ばれます。これは「妖精モルガン」という意味で、海の上に城や町が浮かんで見える不思議な光景を、モルガン・ル・フェイの魔法にたとえたものです。
中世の物語のフェイ
中世ヨーロッパの物語では、フェイは人間の騎士と恋に落ちたり、騎士を異界へ誘ったりする、美しく強い魔力を持った女性として登場することが多くありました。フランスには、半分が蛇の姿をした妖精メリュジーヌが、人間の男と結婚する伝説もあります。メリュジーヌは、夫に「土曜日には決して姿を見ないで」と約束させますが、夫がその約束を破ったことで、正体を知られて去っていきます。
妖精の世界と人間の世界
イギリスやアイルランドの伝承では、妖精たちは丘や塚の中など、人間の世界のすぐそばにある別の世界に住んでいると考えられてきました。妖精の世界で過ごした一晩が、人間の世界では何十年にもあたっていた、という話も各地に伝わっています。また、妖精が人間の赤ちゃんを連れ去り、代わりに妖精の子どもを置いていく「取り替え子(チェンジリング)」の伝承もありました。
小さな妖精のイメージへ
16世紀のイギリスでは、エドマンド・スペンサーの長編詩『妖精の女王』や、シェイクスピアの『夏の夜の夢』など、妖精を描いた文学作品が生まれました。特に『夏の夜の夢』に登場する妖精たちは小さく描かれ、その後、19世紀のヴィクトリア朝の絵本や絵画を通じて、羽の生えた小さな妖精のイメージが広まっていきました。イギリス南西部のピクシーや、1917年のコティングリーの妖精写真も、こうした妖精のイメージと深くかかわっています。

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