ジャージーデビルとは
ジャージーデビルは、アメリカ東部ニュージャージー州南部の広大な松林「パイン・バレンズ」にすむとされる怪物です。馬や山羊のような頭、コウモリのような翼、ひづめのある脚、先が分かれた長い尾を持ち、甲高い叫び声をあげて空を飛ぶといわれます。
ジャージーデビルは、200年以上にわたって語り継がれてきた、アメリカで最も古い怪物伝説の一つです。現在では、ニュージャージー州を代表するキャラクターとしても親しまれています。
パイン・バレンズの森
パイン・バレンズは、ニュージャージー州南部に広がる、面積数千平方キロメートルにも及ぶ松の森です。砂地でやせた土地のため農業に向かず、昔から人があまり住まない地域でした。大都市ニューヨークやフィラデルフィアのすぐ近くにありながら、深い森と湿地が広がるこの土地は、謎めいた雰囲気を持つ場所として、さまざまな言い伝えを生んできました。
13番目の子どもの伝説
ジャージーデビルの誕生については、次のような伝説が語られています。18世紀の1735年ごろ、パイン・バレンズに住む「マザー・リーズ」と呼ばれる女性が、13人目の子どもを身ごもりました。すでに12人の子どもを育てて疲れ果てていた彼女は、「この子は悪魔にでもなってしまえ」と口にしてしまいます。
やがて生まれた子どもは、最初はふつうの赤ちゃんの姿をしていましたが、みるみるうちに翼と尾、ひづめを持つ怪物に姿を変え、家族を襲ったあと、煙突から飛び去ってパイン・バレンズの森へ消えていった――というのです。
1909年の目撃騒動
ジャージーデビルが最も大きな騒ぎを起こしたのは、1909年1月のことです。わずか1週間ほどの間に、ニュージャージー州とその周辺の州で、数多くの人々が「ジャージーデビルを見た」「雪の上に奇妙な足跡が残っていた」と報告しました。足跡は屋根の上にも続いていたといわれます。
新聞が連日のように騒ぎを報じたため、人々は恐れて夜に外出しなくなり、学校や工場が休みになった町もあったと伝えられています。動物園には、ジャージーデビルを捕まえた人に賞金を出すという話まで持ち上がりました。
政治の対立から生まれた伝説?
ジャージーデビルの伝説の起源について、興味深い説があります。18世紀のニュージャージーには、暦(アルマナック)を発行していたリーズという一家がいました。同じころ、フィラデルフィアで暦を発行していたベンジャミン・フランクリンは、ライバルだったリーズ家の暦をからかい、まだ生きているリーズ家の人物が死んで幽霊になったという冗談を書きました。また、リーズ家は当時の植民地の有力者と対立していたこともあり、人々から悪く言われることがあったといいます。
こうした対立やからかいの中で、「リーズ家の悪魔」という言葉が生まれ、それがいつしか本物の怪物の伝説に変わっていったのではないか、と考える研究者もいます。
ジャージーデビルの正体は?
目撃談の正体としては、フクロウやカナダヅルなどの大型の鳥の見間違いが考えられています。夜の森で聞こえる鳥の甲高い鳴き声も、怪物の叫び声だと思われたのかもしれません。1909年の騒動については、新聞による報道合戦や、足跡を偽造するいたずらが騒ぎを大きくしたとも考えられています。
州のシンボルになった怪物
現在、ジャージーデビルはニュージャージー州の象徴的な存在となっており、プロアイスホッケーチーム「ニュージャージー・デビルズ」の名前の由来にもなっています。「デビル(悪魔)」の名前を持つ怪物としては、キリスト教のデビルのイメージともつながっています。翼を持つ怪物という点では、ウェストバージニア州のモスマンともよく比べられます。





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