レヒニッツ写本とは
レヒニッツ写本は、ハンガリー科学アカデミーが所蔵する、未知の文字で書かれた手書きの本です。ハンガリー語の地名から「ロホンツ写本(ロホンツィ写本)」とも呼ばれます。名前は、この本がかつて置かれていたバッチャーニ家の図書館があった町ロホンツ(現在のオーストリア・ブルゲンラント州のレヒニッツ)に由来します。
この写本は、今も誰にも読むことができない謎の本です。何語で書かれているのか、何が書かれているのか、いつ、だれが作ったのかもはっきりしていません。
ハンガリー科学アカデミーへ
レヒニッツ写本は、1838年に、ハンガリーの貴族バッチャーニ家から、ほかの多くの蔵書とともにハンガリー科学アカデミーに寄贈されました。バッチャーニ家がいつ、どこからこの本を手に入れたのかは記録に残っておらず、それ以前の歴史はわかっていません。
文字と挿絵の特徴
写本は小型の紙の本で、448ページにわたって、右から左へ書かれたとみられる文字が続きます。使われている記号の種類は数百にのぼり、アルファベットのような二十数文字とは比べものにならないほど多いことから、音を表す文字だけでなく、意味を表す文字も含まれているのではないかと考えられています。
本には80点以上の挿絵があります。十字架やキリストの受難の場面など、聖書に関係するとみられる絵のほか、三日月や太陽、異教的なシンボルも描かれています。キリスト教、イスラム教、異教の要素が混ざり合っていることも、謎を深める理由の一つになっています。
紙の透かしが示す年代
写本に使われている紙には、16世紀前半のイタリアで作られた紙に見られる透かし模様があります。そのため、紙そのものは16世紀ごろのものと考えられています。ただし、古い紙に後の時代に文字を書き込むこともできるため、紙の年代がそのまま本の作られた年代だとは限りません。
さまざまな解読の試み
レヒニッツ写本については、これまでに多くの研究者がさまざまな解読案を発表してきました。古代ハンガリー文字で書かれた祈祷書だとする説、古代ダキア語(現在のルーマニア地方の古い言語)で書かれているとする説、インドのブラーフミー文字に関係するとする説などです。
しかし、どの解読案も、写本全体を一貫して読み解くことには成功しておらず、研究者の間で広く認められたものはありません。ある研究者が「読めた」と発表した内容を、別の研究者が同じ方法で確かめられないことも多いのです。
偽書説
レヒニッツ写本には、19世紀に作られた偽物ではないかという説も根強くあります。その候補として名前が挙がるのが、ハンガリーの古物収集家サームエル・リテラーティ・ネメシュです。彼は、古い文書や遺物の偽物を作ったことで知られる人物で、写本が世に知られるようになった時期と彼の活動時期が重なることが、疑いの理由になっています。
ただし、偽物だとすれば、数百種類もの記号を使って448ページもの文章を書き続けたことになり、その目的や方法も謎のままです。
世界の未解読の書物
未知の文字で書かれた謎の本としては、15世紀のヴォイニッチ手稿が最も有名です。レヒニッツ写本は、ヴォイニッチ手稿と並んで紹介されることの多い一冊です。また、現代の芸術家が意味のない文字で描いたコデックス・セラフィニアヌスのように、「読めない本」は人の想像を強くかき立てます。古代の文字の中にも、まだ解読されていないものが数多く残されています。



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