エルフとは
エルフは、北欧やゲルマンの神話・伝承に登場する妖精の一族です。古ノルド語では「アールヴ」、古い英語では「エルフ」と呼ばれました。現代では、とがった耳を持ち、長命で美しく、弓や魔法に長けた種族として、ファンタジー小説やゲームに欠かせない存在になっています。
しかし、エルフのイメージは時代とともに大きく変わってきました。神々に近い美しい存在から、小さないたずら好きの妖精へ、そしてふたたび気高く美しい種族へ――エルフの姿の移り変わりを紹介します。
北欧神話のエルフ
13世紀のアイスランドの学者スノッリ・ストゥルルソンがまとめた『エッダ』には、二種類のエルフが登場します。太陽よりも美しい「光のエルフ(リョースアールヴ)」と、地下にすみ瀝青(れきせい)よりも黒い「闇のエルフ(デックアールヴ)」です。光のエルフは、世界樹ユグドラシルがつなぐ九つの世界の一つ、アールヴヘイムにすむとされました。
北欧神話のエルフは、神々とともに祀られることもある、神に近い存在でした。豊穣の神フレイは、アールヴヘイムを治める神とされています。
病をもたらす「エルフの矢」
イギリスの古い伝承では、エルフは目に見えない矢を放って、人や家畜に病をもたらすと考えられていました。原因のわからない急な痛みや病気は「エルフの矢(エルフ・ショット)」によるものだとされ、中世のイギリスの医学書には、エルフの矢による病を治すための呪文や薬の作り方が記されています。
一方で、エルフは人々にとって身近な存在でもありました。イギリスの王の名前「アルフレッド」は、古い英語で「エルフの助言」という意味だとされます。
小さな妖精になったエルフ
中世以降のイギリスでは、エルフは小さないたずら好きの妖精として描かれることが多くなりました。シェイクスピアの『夏の夜の夢』に登場する妖精たちのように、花の陰に隠れるほど小さな姿で描かれるようになったのです。
1812年に出版されたグリム兄弟の童話集には、夜のうちにこっそり靴を作ってくれる小人の話「小人の靴屋」が収められており、英語では「エルフと靴屋」として知られています。19世紀のアメリカでは、サンタクロースの手伝いをしておもちゃを作る小人も「エルフ」と呼ばれるようになりました。
トールキンが作ったエルフ像
小さな妖精になっていたエルフを、背が高く、気高く美しい、不死の種族として描き直したのが、イギリスの作家J・R・R・トールキンです。トールキンは、北欧神話や古い英語の伝承を研究する学者でもあり、その知識をもとに、『ホビットの冒険』(1937年)や『指輪物語』の中に、独自の言葉と歴史を持つエルフの世界を作り上げました。
このトールキンのエルフ像が、その後のファンタジー小説やゲームに受け継がれ、今日の「長い耳を持つ美しい種族」としてのエルフのイメージが形作られました。
アイスランドの「隠れた人々」
アイスランドでは、今も「隠れた人々(フルドゥフォーク)」と呼ばれる、エルフのような存在を信じる人が少なくありません。岩や丘に住む隠れた人々の住まいを壊さないよう、道路の建設計画が見直されたり、住民が反対運動を起こしたりした例が報じられたこともあります。古い伝承が、今も人々の暮らしの中に生きているのです。
エルフとドワーフ
エルフは、ファンタジー作品の中で、背が低く頑固な鍛冶の名人ドワーフとしばしば対になって描かれます。北欧神話では、ドワーフは「闇のエルフ」と同じ存在だと考えられることもあり、エルフとドワーフは、もともと近い関係にあったのです。




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