サラマンダーとは
サラマンダーは、火をつかさどる精霊です。16世紀の医師パラケルススが説いた四大精霊の一つで、燃えさかる炎の中にすむトカゲのような姿で描かれることが多い存在です。水のウンディーネ、風のシルフ、地のノームと並んで四大精霊と呼ばれます。
サラマンダーは、精霊としてだけでなく、「火の中でも生きられる不思議な生き物」として、古代から長い間、実在すると信じられてきました。英語の「サラマンダー」は、実在するサンショウウオやイモリの仲間を指す言葉でもあります。
火の中に住む生き物の伝説
「火の中でも生きられる生き物」という伝説は、とても古くからありました。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、火の中を歩いて火を消してしまう生き物について書き記しています。また、古代ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』には、サラマンダーは体が非常に冷たく、火に触れると、まるで氷のように火を消してしまうと書かれています。
プリニウスは、サラマンダーは強い毒を持っているとも記しており、サラマンダーは恐ろしい生き物としても考えられていました。
サラマンダーの毛と石綿
中世ヨーロッパでは、サラマンダーは実在の生き物として信じられていました。そして、燃えない不思議な布が「サラマンダーの毛で織った布」として売られることがありました。その布は、火にくべても燃えず、汚れだけが焼けてきれいになったといいます。
実は、この布の正体は、石綿(アスベスト)という、燃えない鉱物の繊維で作られたものでした。石綿は、のちに健康に害があることがわかり、現在では使用が禁止されていますが、当時の人々には、まさに火の生き物の毛のように思えたのです。
チェッリーニの思い出
16世紀のイタリアの彫刻家ベンヴェヌート・チェッリーニは、自伝の中で、子どものころの不思議な思い出を書き残しています。ある日、暖炉の火の中で、トカゲのような小さな生き物が楽しそうに動いているのを父親と一緒に見たというのです。父親は、それがサラマンダーで、めったに見られない珍しいものだから決して忘れないように、と言って、チェッリーニの耳をたたいたといいます。
フランス王の紋章
16世紀のフランス王フランソワ1世は、炎の中のサラマンダーを自分の紋章に用いました。紋章には「我は養い、我は消す」という意味の言葉が添えられ、良い火は養い、悪い火は消すという、王の力を表していたと考えられています。フランソワ1世が建てたシャンボール城などには、今もサラマンダーの彫刻が数多く残されています。
サラマンダーの正体は?
サラマンダーの伝説の正体として考えられているのが、実在するサンショウウオの仲間です。ヨーロッパにすむファイアサラマンダーは、黒い体に黄色い模様を持つ両生類で、湿った倒木の中などで冬を越します。人々がたき火のために湿った倒木を火にくべると、中で冬眠していたサンショウウオが、熱さに驚いて這い出してきました。その姿を見た人々が、「火の中から生まれた生き物」だと考えたのが、伝説のもとになったといわれています。
また、ファイアサラマンダーは、皮膚から毒のある液を出すことがあり、これが「サラマンダーは毒を持つ」という言い伝えにつながったとも考えられます。
日本のオオサンショウウオ
日本には、体長1mを超えることもある世界最大級の両生類、オオサンショウウオがすんでいます。19世紀に日本を訪れたドイツ人の医師シーボルトがオオサンショウウオをオランダへ持ち帰り、ヨーロッパの人々を驚かせました。ゲームなどでは、サラマンダーは炎の精霊や竜のような魔物としておなじみです。





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