不知火

しらぬい

妖怪

九州の八代海や有明海に、旧暦8月1日ごろの夜、沖合に無数の火が横一列に並んで現れる怪火。古くは『日本書紀』にも記録がある。現在では、漁船の明かりが海と空気の温度差で屈折して見える蜃気楼の一種と考えられている。

別名しらぬい、シラヌイ、不知火(しらぬい)、不知火海、八朔の不知火、怪火、Shiranui
時代・初出 古代(日本書紀・風土記に記録)〜 年表:古代のナゾ ›
発祥日本(熊本県)
ゆかりの日
  • 8月1日八朔(旧暦8月1日)。八代海・有明海に不知火が現れるとされた夜(現在の暦では8月下旬〜9月)
ステータス
レア度
危険度
実在確率
知名度

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不知火とは

不知火(しらぬい)は、九州の八代海(やつしろかい)や有明海に現れるという、不思議な火です。毎年、旧暦の8月1日(八朔=はっさく)ごろの、風の弱い新月の夜、沖合いに「親火(おやび)」と呼ばれる火がひとつか二つ現れます。親火はやがて左右に分かれて増えていき、ついには数百から数千もの火が、何kmにもわたって横一列に並ぶといいます。近づこうとすると火は遠ざかってしまい、決してたどり着けないと伝えられてきました。八代海は「不知火海」とも呼ばれています。

景行天皇と「知らぬ火」

不知火の名前の由来は、奈良時代にまとめられた『日本書紀』や『肥前国風土記』『肥後国風土記』に記されています。景行天皇が九州の熊襲(くまそ)を平定したあと、船で海を進んでいたところ、日が暮れて暗闇の中で岸の方角がわからなくなってしまいました。すると前方に火が現れたので、天皇はその火を目指して船を進めさせ、無事に岸に着くことができました。天皇がその火を誰がともしているのか尋ねたところ、土地の人々も誰の火なのか知らなかったため、「知らぬ火」と呼ばれるようになったといいます。この地方が「火の国」(肥の国)と呼ばれるのも、この火に由来するとされています。

見物が名物だった不知火

江戸時代から明治時代にかけて、不知火は旧暦8月1日の夜の名物として知られ、多くの人が海辺の高台に集まって見物しました。龍神がともす火だという言い伝えもあり、人々はこの夜、海に向かって手を合わせたといいます。

不知火の正体は蜃気楼

不知火の正体は、大正時代ごろから科学的に調べられるようになり、現在では、蜃気楼の一種だと考えられています。八朔のころの八代海では、夜中の大潮の引き潮で広い干潟が現れ、干潟が冷えて、その上の空気と、暖かい海の上の空気との間に、大きな温度差が生まれます。温度の違う空気の層を光が通ると、光は曲がって進むため、遠くの漁船の明かり(漁火)が、横に引き伸ばされたり、いくつにも分かれたりして見えるのです。最も見えやすいのは、引き潮が最大になる午前3時ごろの前後とされます。

「不知火」の名を持つもの

不知火の名前は、さまざまなものに使われています。大相撲の横綱の土俵入りには「雲竜型」と「不知火型」の二つの型があり、不知火型は、熊本出身の江戸時代の横綱・不知火光右衛門の名にちなむとされます。また、熊本県などで作られる柑橘の「デコポン」は、「不知火(しらぬひ)」という品種のうち、基準を満たしたものにつけられる名前です。古代から語り継がれてきた海の不思議な火の名前が、今も熊本の誇りとして生きているのです。

見られなくなった不知火

しかし、干潟の埋め立てや、夜の海岸の明るさ、漁の方法の変化などによって、現在では不知火を見るのはとても難しくなりました。それでも、熊本県の高校の科学部が研究を続けており、2023年には模型を使って不知火のような蜃気楼の再現に成功しました。2024年には漁協の協力を得て海上で観測を行い、漁船に積んだ明かりが横に広がって見える様子の撮影に成功したと報じられています。

海に現れる不思議な火としては、九州の海に伝わる海坊主や船幽霊の話もあります。狐が火をともすという狐火も、各地に伝わる怪火の一つです。

不知火のつながり

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出典・参考文献

  1. 日本書紀(720)

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