九尾の狐とは
九尾の狐は、九本の尾を持つ狐の妖怪です。古代中国の書物に登場し、中国、インド、日本をまたにかけて、美女に化けて王をたぶらかし、国を滅ぼそうとした大妖怪として語られてきました。日本では、平安時代の美女・玉藻前(たまものまえ)の正体として知られています。
九尾の狐は、日本の妖怪の中でも特に強大な力を持つ存在として、漫画やアニメ、ゲームなどにもたびたび登場しています。
めでたい獣だった九尾の狐
九尾の狐は、古代中国の地理書『山海経(せんがいきょう)』に登場します。そこには、青丘(せいきゅう)という国に、九本の尾を持つ狐がいて、赤ん坊のような声で鳴き、人を食べるが、その肉を食べると邪気にあたらない、と記されています。
一方で、古代中国の漢の時代などには、九尾の狐は、めでたいことの前ぶれとして現れる「瑞獣(ずいじゅう)」とされることもありました。九本の尾は子孫が栄えることを表すと考えられ、九尾の狐が現れるのは、よい王が世を治めているしるしだとされたのです。
国を滅ぼす美女
しかし、時代が下ると、九尾の狐は、美女に化けて王をたぶらかし、国を滅ぼす悪しき妖怪として語られるようになりました。16世紀の中国の小説『封神演義』では、古代中国の殷の国の最後の王・紂王を惑わせて国を滅ぼした美女・妲己(だっき)の正体が、千年を生きた狐の精とされています。
日本に伝わった伝説では、九尾の狐は、中国で妲己として殷を滅ぼしたあと、インドでは王の妃・華陽夫人となって王を惑わし、ふたたび中国に戻って周の王の后・褒姒(ほうじ)になったとされます。そして最後に、遣唐使の船に乗って日本へ渡ってきたと語られています。
玉藻前の伝説
日本では、平安時代の末に鳥羽上皇に仕えた絶世の美女「玉藻前」の正体が九尾の狐だったという伝説が有名です。玉藻前は、美しいだけでなく、どんな質問にも答えられるほど賢く、上皇の深い寵愛を受けました。
ところが、やがて上皇は原因不明の病に倒れてしまいます。陰陽師が占ったところ、玉藻前の正体が九尾の狐であることが見破られました。正体を現した狐は、那須野(現在の栃木県)へ逃げましたが、朝廷が送った武士たちによって討ち取られたといいます。
殺生石の伝説
討ち取られた狐の怨念は、毒気を放つ石「殺生石」になったと伝えられています。殺生石に近づいた人や動物は、毒気にあたって次々と倒れたといいます。のちに、玄翁(げんのう)という僧が、殺生石を杖で打ち砕いて、狐の霊を鎮めたと語られています。大きな金づちを「げんのう」と呼ぶのは、この僧の名前に由来するともいわれます。
この伝説は、能の『殺生石』の題材となり、多くの人々に親しまれてきました。
殺生石が割れた
栃木県那須町に今も残る殺生石は、周囲に硫化水素などの火山ガスが噴き出す場所にあり、近づいた動物が倒れることがあったことから、「毒気を放つ石」の伝説が生まれたと考えられています。江戸時代には、松尾芭蕉も『おくのほそ道』の旅で、この殺生石を訪れています。
2022年3月、この殺生石が二つに割れているのが見つかり、「九尾の狐が復活したのでは」とSNSで大きな話題になりました。石が割れたのは、もともとあったひびに雨水がしみ込み、凍ったり溶けたりをくり返したためと考えられています。
九尾の狐のつながり
九尾の狐をはじめとする狐の妖怪については、妖狐の項目でも紹介しています。九尾の狐と玉藻前の伝説に登場する人物や関係は、ナゾマップの相関図「九尾の狐と玉藻前」でも、図にしてまとめています。







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