大入道とは
大入道(おおにゅうどう)は、見上げるほど大きな坊主頭の姿で現れる妖怪です。「入道」とは、もともと仏門に入って髪をそった人のことで、そこから、坊主頭の大男や化け物を指す言葉としても使われるようになりました。大入道は、夜道や峠、川辺などに突然現れて、通りがかった人を驚かせます。背の高さは数mから、家の屋根や木の高さをはるかに超えるものまで、話によってさまざまです。
正体は狸や狐
大入道の話は日本各地に伝わっていますが、その多くで、正体は人を化かす狸や狐、カワウソ、イタチなどの動物だとされています。大入道に驚いて逃げ出した人が、あとで見ると、狸が化けていた跡があった、という話もよく語られます。大入道の足元を棒で払ったり、たばこの煙を吹きかけたりすると、正体を現して逃げていったという話もあります。暗い夜道で、木の影や大きな岩を、巨大な人の姿と見間違えたことが、大入道の話を生んだとも考えられます。
見越し入道との関係
大入道とよく似た妖怪に「見越し入道」があります。見越し入道は、はじめは小さな坊主の姿で現れ、見上げるほどにどんどん背が伸びていく妖怪で、見上げ続けると後ろに倒れて死んでしまうともいわれます。「見越した!」と言うと消えるとされ、新潟県の佐渡島に伝わる見上入道も同じ仲間です。江戸時代の絵師鳥山石燕は、1776年の『画図百鬼夜行』に、木の上から首を伸ばしてのぞき込む「見越」の姿を描いています。大入道と見越し入道は、同じ妖怪として扱われることも多く、江戸時代の絵本などでは、首の長い大入道が妖怪の親玉として描かれることもありました。
祭りの大入道
大入道は、祭りの中にも登場します。三重県四日市市の「四日市祭」では、首が伸び縮みする巨大なからくり人形「大入道」の山車が練り歩くことで知られています。人を驚かせる妖怪が、町の人々に親しまれる祭りの主役になっている例です。
「入道雲」の名前の由来
夏の空にもくもくと高く盛り上がる積乱雲は、「入道雲」と呼ばれます。この名前は、坊主頭の大男である大入道が、空に大きく立ち上がっている姿に見立てたものだといわれます。昔の人々にとって、見上げるほど大きく、ぬっと空にそびえる雲の姿は、まさに大入道そのものだったのでしょう。入道雲は、激しい雷雨をもたらすことがあり、恐れられる存在でもありました。妖怪の名前が、身近な自然の言葉として今も使われている例です。
見越し入道に出会ったら
見上げるほど背が伸びていく見越し入道に出会ったときは、決して見上げ続けてはいけないとされます。地方によっては、「見越し入道、見抜いたぞ」「見越した」などと声をかけると消えるとされ、反対に、下から上へと見上げていくと、ますます大きくなってしまうといいます。足元から頭へ見上げず、頭から足元へと見下ろすようにするとよい、という言い伝えもあります。正体を見抜かれた妖怪は力を失うという、昔話によく見られる考え方です。
海の大入道
海に現れる巨大な坊主頭の妖怪は海坊主と呼ばれ、船を沈めたり、船乗りを脅かしたりするといわれます。山の巨人としては、国をつくったとされるダイダラボッチも有名です。大きな姿で人を驚かせる妖怪の話には、夜道の暗さや心細さが、巨大な影となって現れているのかもしれません。





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